まとまった仕事が片付いたので、山に登る予定だったのだが、雨のため断念。代わりにAmazonプライムで映画を観ることにした。最近、英語のヒアリングを兼ねて暇さえあらば洋画を観るのにハマっているのです。

今日見た映画は2014年にフランスで公開された、「奇跡の授業」(LES HERITIER)。フランス映画なので英語の勉強にはならなかったけれど、打ちのめされた。

こんな素晴らしい映画の存在を知らなかったとは。。

ストーリーは、学級崩壊寸前のクラスに赴任してきた熱血教師が、生徒たちに「クラスでコンクールに挑戦しよう」と提案し、最初はやる気のなかった落ちこぼれの生徒たちが、徐々に変わり、最後にはコンクールで優勝するという話。日本映画で言えば「スイングガールズ」に通じるものがあるのですが、コンクールのテーマが「アウシュビッツ」という重いものであることで、趣はかなり違う。しかも、これは事実に基づいた話であり、映画化のきっかけが、この落ちこぼれクラスの生徒の一人が書いた脚本だったという。

日本でも学級崩壊はめずらしいことではないけれど、フランスの場合、人種や宗教の違いによる生徒同士の争いも加わるからさらに深刻。ちょっとしたことですぐに一触即発状態になるクラスなのだけど、教師の熱意で少しずつ、本当に少しずつ、生徒たちが変わり始める。

最初は、生徒自身が「自分たちにできるわけがない」「恥をかくだけ」と、思い込んでいる。そんなとき、「あなたたちを信じているのは私一人なの? あなたたちならできる!」という先生のセリフには胸を打たれた。

強制収容所の資料館を見るより、帰りにモール寄って買い物をすることにワクワクしていた生徒も、いざ、資料館に入ってみると「買い物はまた今度にする」と言って資料に見入っている。「本なんて嫌い」と投げ出していた生徒が、ふとしたきっかけで読み始め、本に描かれた女性の人生に引き込まれていく(この本は、フランスで最も有名な女性、シモーヌ・ベイユの自伝だった)。「自分には関係ない」と無関心を決め込んでいた生徒が他の生徒たちを仕切り始める。クラス全体がだんだん真剣みを帯びてくる。

強制収容所から奇跡的に生き延びた老人から、実際に話を聞いたことで、生徒たちはさらに変わる。この老人は役者ではなく本当の生存者だということだ。話を聞く生徒たちが目に涙を浮かべる様子は演技とは思えず、私自身も映画の中に入って、彼らといっしょにこの人の体験談を聴いている気持ちになった。

夏休みが明けて、表彰式に招待された生徒たち。慣れないスーツやドレスに身を包み、バスで会場に向かう。3位の学校、2位の学校が呼び出されたが彼らの学校の名前はよばれない。そわそわするみんなの表情……。最後に「レオン・ブルム」と、彼らの学校の名前が呼び出される。優勝が決まった瞬間。会場には、かつて「落ちこぼれに時間を費やすな」と言った校長もしれっと座っていたのが笑える。

最後は、エッフェル塔の前で先生を囲んで優勝を喜び合う生徒たち。この経験が彼らの人生にどれほどの影響を与えたことだろう。将来、辛いことがあってもこの経験を思いだせば乗り越えられる、あの成功体験が生涯にわたって彼らを支えてくれるに違いない。

この映画が伝えようとしたことは、フランス語のタイトルにも示されているように、「歴史を伝え続けること」の大切さなのだろうけど、私が一番感じたのは、「人間は変われる」ということ。ただし、「信じて支えてくれる人」がいればこそだが。そんな人に私はなりたい。